先進医療

  

症例4:イヌの肝機能不全と再生医療

病気について

イヌの肝機能障害は肝臓や胆のうの炎症、胆汁のうっ滞など様々な原因によって発生しますが、中でも肝不全は非常に治療が難しい病気です。 その一種である胆のうの粘液のう腫は、胆汁が極端に粘度を増すために、胆汁の排出ができなくなって肝臓に機能障害が生じるという病気です。その結果、肝臓の中に胆汁がうっ滞して、肝臓の様々な機能が障害されたり、重症になると胆のうが破裂して、命の危険にも関わります。シェルティやポメラニアンでよく見られる病気ですが、他の犬種でも発症します。

症例と治療法について

本症例でも胆汁のうっ滞が重度で、そのままでは命の危険も危ぶまれました。そこで、胆のう摘出手術を行い、同時に肝臓の生検(肝臓の一部を採取し、病理検査を行います)を行ったところ、肝臓の血管構造の異常などを伴う重度の肝機能障害が疑われました。 術後一般的な肝機能障害の治療を行いましたが、肝臓の状態が安定しないため、肝機能の回復を目的に幹細胞移植を行うことにしました。 肝臓の疾患に対する再生医療は人の医療では炎症の抑制、増殖因子等の分泌、血管新生、肝細胞のアポトーシスの抑制および肝臓組織の修復といった効果が期待されていますが、動物でも同様の効果が期待されています。 幹細胞移植は皮下脂肪や骨髄から幹細胞を採取して、細胞培養で増やしたものを体に戻す治療です。今回は培養した細胞を静脈点滴で投与しましたので、ワンちゃんの負担は最小限で済みました。

結果とまとめ

これまで1年半の間に継続して計21回の幹細胞移植を行いましたが、ワンちゃんは元気で食欲もあり、まずまずの状態を維持しています。その間目立った症状の悪化もなく、飼い主様からは「再生医療を行ってよかった」と、ご満足のお言葉をいただいています。 イヌの肝不全は治療が難しく、人間のように肝移植を行うこともできません。それゆえに短い期間でなくなってしまうことも多い病気ですが、本症例では幹細胞移植を行った結果、長期間安定した状態が維持できています。今後も移植した幹細胞による肝臓への好影響が期待されます。

ALB(アルブミン)

ALP(アルカリフォスファターゼ)

図:

治療期間中の血液生化学検査の変化を表したグラフです
胆のう摘出手術を行った後に、幹細胞移植を行いました。肝臓の合成機能の指標の一つであるALBは安定しており、胆汁うっ滞の指標の一つであるALPは大きな上昇は見られなくなりました

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