先進医療

症例2:イヌの骨肉腫と免疫細胞療法

病気について

骨肉腫(骨のがん)は、イヌの場合主に四肢の骨に発生します。一般的な治療は患肢の切断手術と抗がん剤の投与ですが、発見された時点で治療をしても短期間で転移を起こして死に至ることが多く、完治は非常に難しい病気です。
ある研究では断脚手術のみの治療での生存期間の中央値は126日であり、術後1年後の生存率は10.7%でした。また、手術後に抗がん剤による治療を行った場合は延命効果が得られるものの、2年生存率は30%以下であったという報告がなされています。このように、骨肉腫は従来の治療を組み合わせても生存期間は非常に短いことが多く、治療の難しい病気といえます。

症例と治療法について

本症例では、後ろ足の付け根の骨に腫瘍がありました。飼い主様のご希望もあり、後ろ足を温存するための手術を行ったところ、病理検査で骨肉腫とわかりました。 この後、抗がん剤治療は行わずに免疫細胞療法を始めることにしました。選択した方法は、体内にがんの免疫をつくる「樹状細胞がんワクチン」です。
樹状細胞がんワクチンの接種は普通のワクチンと同じで、皮下注射をするだけの簡単な処置です。最初の手術からおよそ1年後まで、計19回樹状細胞がんワクチンを接種しました。
その後は飼い主様のご希望で、がんワクチンの接種は行わずに経過観察となりましたが、12歳で別の病気で亡くなるまで毎年ワクチンやフィラリア予防の時期には来院なさって元気に走り回っていると飼い主様からお聞きしていました。

投与スケジュール

結果とまとめ

骨肉腫に罹ったワンちゃんのほとんどは半年以内になくなってしまいます。そのような多くの例と比較すると、本症例ではがんは完治できたと考えられます。
樹状細胞がんワクチンにより体内のリンパ球にがんの特徴が伝達されて、これらのリンパ球が体内に残っていたがん細胞を攻撃して転移や再発を抑えてくれる効果が、今後他の同種症例においても期待されます。 また、がんを早期に発見でき、適切な手術ができたこともこの子の治療を成功に導く一つの要因となったと言えるでしょう。

図:

治療前の股関節のレントゲン写真です。点線で囲まれた部分ががん病巣です このまま治療しないでおくと、骨の融解が進行し、骨折して強い痛みを伴うようになります。通常この病巣を含めた断脚手術が第一の選択肢となりますが、この子は患部のみ切除し、足は使えるように手術しました

写真:樹状細胞がんワクチン接種風景
(写真はイメージです。実際の患者様ではありません)

写真:樹状細胞がんワクチンの顕微鏡写真

他の症例についてはこちら

歯科

準備中です